ピンクフロイド知らない

気になった音楽、PVの話

フェスが生んだファストミュージック

まず、こちらをご覧ください。

www.youtube.com

Part3まで見てください。後半の話おもしろいんで。
「フェス、多すぎない?」という話題を皮切りに昨今のフェス事情やフェスの今後についてサカナクションの一郎さんとMUSICAの鹿野さん中心に議論する動画です。

まず、この動画面白いですよねシンプルに。
こういう動画もっと増えて欲しいなと思います。

さて、思ったことをつらつらと書きます。

「フェスロック」という言葉が生まれつつある

マジなの??
動画の中で話されているように「フェスには行くがワンマンには行かない人が増えた」や「バラードが減った」というのはなんとなく感じていたけど、「フェス受け」を最重要視するような動きがあるとは...

めちゃくちゃストイックですよね、受けを重視してやる音楽を決めるって。
でもそれぐらい、フェスに出られるかがバンドで成功できるかの生命線になっていると言うことみたいです。
鹿野さんも「フェスで食べていくという活動をしているアーティストもいる」と仰られていまして、シビアな世界だなと...(感想うっす)

一郎さんは「盛り上げるのが上手いお祭り的なバンドが増えた」「フェスに受け入れられない音楽をやっている人達はシーンの表に出てこれないのか」と仰っていまして、最前線のアーティストとして違和感を感じる部分もあるようです。

リスナーとしては「業界の文化の醸成」とか言われてもピンと来ないのですが、単純に「音楽の多様性」が失われるのは悲しいことだなと思います。

ハードロックファンの男の子がそういうジャンルのバンドが全然大型フェスに呼ばれないと嘆いていましたが、本当に最近邦楽でハードコア系のって名前きかないですよね。SiMが出てきたぐらいの時代はちょこちょこ推されているバンドもいた気がしますが、今はサバプロぐらいかな。
フェス受けするバンドばっかりが取り上げられて、それ以外が避け物にされるシーンになっちゃうとつまらないです。

でも極端な話、「フェスに出られないと食っていけない」みたいな世界になると、もうそうならざるを得ないですよね。
というかそうなりつつあるんでしょうなあ。

そもそもなぜフェスが人気なのか

動画の中でも「どんどん客層が若くなってきている」とか「レジャー化している」という話もありますが、若者の中で「フェスに行くのがかっこいい、お洒落」というカルチャーができた、というのが大きいのかなと感じます。

以前別の記事でも書きましたが「フェスは映える」んですよ。
SNSの成長とともに、リア充アピールできるイベントとして人気を獲得したという側面は結構あると思っています。

その結果、悪い言い方をすれば「特に音楽に興味が無い人も客層として取り込めた」ことがフェスが成功し、来場者も順調に増えている要因なのかなと思います。

そして、そういう「ライト層」のお客さんの割合が多いので、イベントを盛り上げたければ「ライト層」に向けて「わかりやすい親切なフェス」を作る必要があると。
結果、ラインナップも被るし、ジャンルの幅も狭くってきているということみたいです。

そういう人のほとんどはフェスの後にワンマンもツアーも行かないでしょうね。
だって大して音楽が好きなわけじゃないから。

こうして生まれたファストミュージック

こういう類の話は、音楽に限らずどの業界でもあるんでしょうが難しい話です...

デザインが凝った職人デザイナーの服よりユニクロZARAといったファストファッションの方が売上がありますし、星付きのレストランよりマクドナルドや牛丼チェーンのようなファストフードに人が殺到するわけです。
「フェスロック」と呼ばれている音楽はファストミュージックといったところでしょうか。

結局はディープなファンよりライトなファンの方が圧倒的に人数が多いので、ライトなファンをターゲットにした方がお金に繋がりやすいんですよね。
商売をする上では「大衆受け」というのは重要ですし運営会社はそれでもいいかもしれませんが、音楽を作る「クリエイター」としては複雑な心境でしょう。
自分が作る音楽は枠にはめられたファストミュージックでいいのか」と。

音源が売れなくなりバンドはライブでいかに稼ぐかという課題を背負っているわけですが、ライブシーンですら「フェス受け」というハードルがあるとすると「ミュージシャンにとって優しい時代ではない」という一郎さんの言葉が正に今のバンドシーンを表しているように思います。厳しい時代ですな。

音楽で商売をする難しさ

このままではあまりに悲しい結末なので、ここからはバンドの今後について考えていきたいと思います。

先程自分で「ファストファッション」や「ファストフード」を引き合いに出しましたが、それらと「ファストミュージック」では決定的に違う部分があります。

それは「価格戦略がない」ということです。

皆さんは「CDの値段がほぼ同じであること」に違和感を感じたことはないでしょうか?
ほとんどのアルバムは2000~4000円ぐらいで価格設定されています。音源だけで10000円するアルバムなんて見たことありません。

服や料理の場合「上質なものを高価格で提供する」ということができます。
奇抜なデザインで20万円するコートは、他のブランドが1万円のコートを20着売る間に1着売れば同じ売上があげられますし、低価格帯と高価格帯はターゲットの客層も違うので基本的に共存が可能です。

しかし音楽の場合は違います。
例えばメジャーアーティストが「今回は海外のレコーディングスタジオで現地のエンジニアと一緒にアルバム制作をしました!」と言っていたとします。作るためにお金もかかっていますし、音質も良いはずです。
でもアルバムの値段は変わりません。

なぜこうなっているか。
その要素は色々あるようですが「再販制度」という存在が大きいと言われています。
再販制度についてはこちらをご覧ください。
www.riaj.or.jp

一部抜粋

商品の選択の幅を確保し、全国どの地域でも平等かつ手近にその文化を享受できることが、消費者にとって最大の利益と考えられた
この再販制度によって、多種多様なレコードや出版物が、全国同一価格で、安定的に消費者のもとに供給されています。

業界全体で値段をある程度画一化しようという取り組みがなされているということです。

値段が画一化されるとどういうことが起きるか 価格を上げることはできないわけですから「販売数」を増やすことでしか、総売上を伸ばす手段はないことになります。 だから「大衆に広く受け入れられる」というのは、音楽ビジネスにおいて極めて重要なことなのです。

音楽が生み出すお金というのは「曲の良さ」や「演奏の上手さ」ではなく、ほぼ「知名度」によって左右されるということです。

とんでもない発明

とはいえです。
アーティストとして「知名度」を得ようと思えば、良い曲を書いていることなど大前提なわけですから地道に良い曲を書いて活動するしかありません。

そういった最中に、ある発明をした人がいます。
秋元康です。

CDに握手券を入れたり、ジャケットがバージョン違いのCDを幾つも出すいわゆる「秋元商法」を編み出し、48グループは爆発的なCD売上を記録しました。

秋元商法の何がえげつないのか。
それは「1人に対して同じCDは1枚しか売れない」という固定概念を覆したことにあります。

AKB48がデビューしたての頃はまだ「アイドルはオタクのもの」という風潮がありましたし、 尖ったジャンルと今でも言えると思います。

「広くたくさんの人に買ってもらわないと売上があがらない」という既存のCDビジネスに対して、「1人に対してメチャクチャ買わせる」というボディーブローをかましたわけです。

結果、「例えファンの人数では負けても売上ではコールド勝ち」という今までは考えられない現象が起きました。
※今となってはアイドルファンの規模も凄まじいですが

バンドの今後

勿論、「握手会をするべきだ」と言うつもりはありません。
ただ、流行にはまらない音楽をするなら「今いるファンにより強く支えてもらう」方法を探らないといけないんだと思います。

ファンとの関わりをより深くし、音源やライブ以上の交流が必要なんだろうなと。
そうしないと生き残っていけないんだと思います。

やりたい音楽がその時の流行とうまくマッチしていれば良いですが、そうでないバンドもたくさん居ます。 個人的にはかっこいいと思うが「多分こいつら売れないだろうな...」というバンドもいると思います。
そういうバンドには厳しい時代かもしれませんが、本当に頑張って活動して欲しいです。

ちなみに

私は大型フェスには行きません。なぜなら暑いし人多くて疲れるわりに遠くからしかライブが見れないからです。
それではみなさん、御機嫌よう。