ピンクフロイド知らない

気になった音楽、PVの話

なぜ音楽は「ほぼ無料」になったのか

先日こういう記事を書かせていただきました。

tadokoro.hateblo.jp

予想以上に反響がありまして、たくさんの方に読んでいただきました。
本当にありがとうございます。

このブログをの反応を見させていただくと、「でも、やっぱり音楽を無料で聞くっていうのは納得できない」「結局お前はMusicFMについてどう考えているの?」という方がいらっしゃいました。
当然の反応だと思います。

先の記事でも

まず始めにこれだけは言いたいですが、既に「楽曲」はフリーミアムで言うところの「無料部分」にほぼなっています。

の1文でまとめてしまっており、なぜ「無料部分」になったのかには触れませんでした。
そこで今回は「音楽の値段が下がった理由」と「MusicFM等で音楽を無料で聞くこと」に対する私なりの考えを書いていきたいと思います。

なぜ音楽の値段は下がったのか

それは音楽が「データ」だからだと考えています。
データは全く同じものがコピーできますし、どこかに送ることもできます。

コピーできるからCDにも焼けるし、簡単にアップロードもできます。

まだ、家庭にパソコンが無い時代はコピーができないのでCDが売れました。
でも、徐々にパソコンやスマホが浸透し、誰でも簡単にデータを取り込んでコピーできるようになりました。
同じものをコストゼロで、かつ無限に複製できるもの」の値段が下がっていくのは当然のことです。

音楽の値段が下がったのはクリエーターが悪いわけでもなく、勿論リスナーが悪いわけでもありません。
ただ「テクノロジーが進歩して、社会がそうなった」というだけのことで、悲しむべきことでも無いと思っています。

ただひとつ言えるのは、この社会の変化が「皆が予想するよりはるかに速く、そして劇的に起きた」ということです。

大学の話

私の話を例にします。

私が大学に入った時、軽音サークルの同級生のほぼ全員がガラケーを持っていました。
記憶する限り、スマホをその時点で持っていたのは50人余りの同級生の中で2人か3人。
コピーする曲はCDに焼いてみんなに配り、家で聞いて練習しました。

私が大学を卒業する時、サークルの同級生は1人残らず全員がスマホを持っていました
練習する曲はDropBoxに上げてみんなで共有していましたし、私が作曲した曲はSoundCloudに上げて聞いてもらいLINEでフィードバックしてもらっていました。
「自分の好きなバンドを布教したいから」と、アルバムをまるまるクラウドストレージに上げて友達に公開している人もいたのを覚えています。

5年足らずでこれだけ環境が変わったんです。

そして、この例で言うところのDropBoxは「広告をつけているか、いないか」の違いはあれどやっていることはほぼMusicFMと同じです。
データをメディアに焼いている頃は「音質」という面で本家のCDに分がありましたが、データ自体をやり取りし始めたこの時点で既に「知り合いの誰かが持っているCD」を買う必要性は、ほぼほぼゼロでした

テクノロジーの進歩によって音楽をコピーできるだけでなく、シェアも簡単に広範囲にできるようになったのです。

こういったことは音楽だけでなく、「データ」であれば何にでも起こりうることです。
現に動画もほぼサブスクリプションに移行し、お金を払って動画単体をレンタルしたり買う人はかなり減ったと思います。
MusicFM等の悪徳業者は、このテクノロジーの進歩の過程で「不正に金儲けしてやろう」と出現しただけに過ぎず、業者の存在に関係なく遅かれ早かれコピーしてシェアできるデータの値段は必ず下がることになります

次にもう少し「無料で音楽を聞く」こと、MusicFM等のアプリに対しての考えを詳しく書きたいと思います。

そもそも「無料で音楽を聞く」は昔からあった。

もう少し昔の話をします。

私は今20代後半ですが、小学校の頃は借りてきたCDをカセットテープにダビングして聞いていました。
中学あたりでMDが流行り(今の子はMD知らないんだろうな...)、MDに焼いて友達同士で貸しあって聞いたり、はたまたクラスで「自分のお気に入りアルバム」を作って回すようなこともしていました。

アジカンの「ソルファ」のダビングCDを持っているA君に、貸してもらう順番待ちが発生しA君が一時権力者のようになっていたのを覚えています。
多分、私と同年代ぐらいの方なら大多数の人が通った道だと思います。

これと、今ネットで無料で音楽が聞けるのと何が違うんですか??

僕には「MDを貸す相手が昔はあなたの教室の誰かだったのが、インターネットの普及にによって世界中の誰かに変わっただけ」にしか見えません。
皆さんが昔からやってきた「音楽の貸し借り」は本質的にはMusicFMと同じですし、友達にCDを焼いてもらう時に「アーティストの利益を奪ってしまった...」などと考えていたでしょうか。
ただ「友達が持っているから焼いてもらえばいい」、それだけだったはずです。

法律的にアウトだろカス

確かにそうです。MusicFMは他人の著作権で利益を得ようとしているので、サイト運営者は取り締まられるべきだと思います。

ですが、リスナー側の行動、動機はCDやMDを焼いてもらう時と全く同じですよね?
リスナー側からすれば「AppStoreにあるアプリを使ってるだけでそれが違法かどうかなんて知らないし、どうでもいい」これが全てです。

私はMusicFMについて詳しくありませんが、調べたところ少なくともユーザーから逮捕者は出ていないと認識していますし、これだけの利用者がいて逮捕できないということは実質的に法的拘束力は無いに等しいというのが現状だと思います。

僕が言いたいのは「無料で音楽を聞けるサイトを潰そうと活動するのは良いこと。だけど本質的には昔も今もやっていることは変わっていない。自分がMusicFMを使っていないというのを振りかざして利用者を、現代の若者を叩くのはやめて欲しい」ということです。
あなたがその音源にお金を払わずに聞くための手段が、カセットテープ、MD、ダビングしたCD、DropBox上のMP3ファイル、MusicFMとテクノロジーの進歩に伴って変遷しているだけです。
進歩に伴ってシェアできる範囲が広がり、それに従いデータの価値も下がりました。

そして、ここで1つ質問をさせてください。

MusicFMを使うなと言っている男性は、日頃見ているであろうアダルトビデオにも勿論毎回お金を払っているんですよね?

XVIDEOSやPornHubも使わないし、毎回動画を借りるか買っているんですよね?
もし本当にそうなら、ここでこの記事を読むのをやめてください。
あなたのような聖人に言うことはありません。日本のために活躍していただければと思います。
(女性の方は引き続き半笑いでご覧下さい)

毎日タダでエロ動画を見ている方はもう少し話をしましょう。

我々は「"たまたま" XVIDEOSはあるが、音楽は買う時代」に育ったからXVIDEOSは平気で使うが「音楽を無料で聞く」ことには違和感を覚える人間に育っただけで、もしあなたが「XVIDEOSもMusicFMも漫画村もある時代」に育っていたら、全て悪意なく使っていたはずです。そして、それが現代の若者です。

私は「XVIDEOSで毎晩お楽しみであること」を責めたいわけではないのです。
「便利なものがあるから使っているだけで、作り手の苦労とか利益とか言われても知ったことではない。」というリスナーの気持ちはなんとなく理解できますよね?と言いたいのです。

そして「自分が当事者になった時だけ権利を主張する」のは、少し虫が良すぎるのでは、と。

今MusicFMを潰そうという活動があるようです。
こういった問題に対して「サイトを潰せ」「ユーザーは金を出せ」と喧伝することは正しいことですし正義感あふれる行動だと思います。

ただ、MusicFMを取り締まることがいかに難しいかは性質が同じXVIDEOSが長年存続していることが表していますし、男性諸君が今日も無料でアダルトビデオを見るようにMusicFMユーザーも使うのをやめることは無いでしょう。
たとえ、漫画村のようにサイトを消せたとしても、漫画ビレッジが出現したように、類似サイトが出てきてイタチごっこになるのが落ちです。

上記のような状況を考えると、違法サイトを弾圧することが音楽業界を良くするための根本的対策だとは思えません
本当にやるべきことは「音楽の値段が下がるのは時代の潮流であるという現実を認め、新しい時代でも利益を生み出せる活動方法をバンド、ライブハウスが模索すること」ではないのでしょうか。

以上が、「音楽の値段が下がった理由」「MusicFM等で音楽を聞くこと」に対する私の考えです。

そして最後に、もう一度ライブについて触れさせてください。

そしてライブへ

テクノロジーが進歩し社会が変化したことで音楽の値段、厳密には「音源の値段」は下がりました。
ですが一方で、社会が変化しても価値のあるものがあります。それがライブです。

もしかしたら、前の記事を読んでくださった方の中には、私を「ライブを軽視している人間」だと思った方がいらっしゃるかもしれません。
まったくもって逆です。ライブにこそとてつもない価値があると思っています。

なぜなら「ライブを見たという体験」「でかいスピーカーの前に立って内臓を揺さぶられたという体験」は決してコピーできないからです!!!
皆さんが作った曲も「データとして売るための価値」がなくなっただけで制作活動自体に意味がなくなったわけではないですし、ライブにもグッズにも価値は詰まっています!

今一度言っておきますが、私はライブハウスで見るライブが大好きです
CHONの初来日ツアーにも行きましたし、ハヌマーンがもしまたライブをするならチケット代2万でも駆けつける準備はありますし、LOSTAGEのライブの帰りは毎回喉がかれています。

ライブハウスを知らない人にも是非、生のライブを体験して欲しい。

だけど、今のライブはいささか時代に逆行している。
テレビの前から視聴者がいなくなったように「その時その場所にいなければならない」というのは敬遠されがちです。
今のユーザーは「見たい時に見、やりたい時にやる」のです。

映画や舞台のように「何公演かあって、自分の都合の合う日時を選ぶ」スタイルであればまだいいのですが、ライブハウスは本当にピンポイント。
それがいいんじゃないか!」と言いたいのは私もなのですが、とにかく時代の流れとは合っていないのです。

ならば、配信ライブを定期的に行い、お客さんの都合が合うタイミングで見てもらう方が良いと考えました。
配信ライブは配信機材さえ購入すればスタジオ代だけで済むので、頻繁に行えるからです。単純に回数が多いほど見てもらえる確率も上がりますし、お客さんも場所や天候を気にする必要が無くなります。

上にも書きましたが今の時代だからこそライブに価値があります
だから1人でも多くの人をライブの世界に引き込んでほしい。
そのためには雰囲気だけでも味わってもらって、ライブに行きたいと思わせて欲しいんです

そのために、前の記事を書きました。

「ライブハウスは不要」だとか「ライブは配信で十分」などとは、1ミリも思っていません
ライブシーンに新規顧客を引き込むための動線、選択肢を増やしませんか」ということを伝えたいのです。

私はもうバンドを辞めて久しいので、バンドマンやライブハウス関係者にいくら嫌われようがノーダメージの、いわゆる無敵の人

皆さんがTwitter上なり打ち上げの席なりで、僕の悪口がてら少しでも「今後のバンドのあり方」について議論するきっかけになれば僕も嬉しいですし、「嫌われ甲斐がある」というものです。

以上になります。
こんな長文を最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました。